Daily ASCII Linux

All ASCII Linux Issue / Linux Magazine 2002年7月号

Biz Express Focus “Ready for e-business”


2002年6月7日

IBM Software on Linux

今年1月Linuxについての4社協業による成果としてエンタープライズに向けたLinuxカーネル機能強化が発表された。今回はその協業4社の内の1社である日本IBMとそのパートナー企業のeビジネス展開を取材した。

 Linuxは誕生してから目ざましいスピードで成長を遂げたサーバOSとして注目を浴びてきた。現在その存在は単なる「インフラストラクチャー」ではなく「eビジネス」を支えるべき主柱となってきており、その兆候は全世界で見ることができる。

 たとえば、「モルガン・スタンレー」「マクドナルド」「クレディ・スイス」「アマゾン・ドットコム」「ワーナー・ブラザース」をはじめとして大手銀行や通信会社がLinuxを採用し始めている。その使用も単なるプリンタ/ファイルサーバやメールサーバといったものから、基幹業務に密接に関係したDBサーバやECサーバ、スーパーコンピューティングクラスタからERP、CRM、SCMとまさにeビジネスの中核で使用されはじめている。

 IBMではeビジネス構築のため豊富なLinuxベースのハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供している。特にソフトウェアはeビジネス構築には欠かすことのできないビジネスアプリケーションの原動力であり、堅牢で優れた柔軟性を持ち、豊富な機能を提供している。

Linux開発者への朗報 −Eclipse

写真1 WebSphere Studio
 IBMは2001年11月5日にEclipseプロジェクトに対して4000万ドル相当のツールを供与したと発表した。このEclipseをベースに、優れたJavaプログラム開発機能と、WebサービスをはじめとしたWebアプリケーション開発機能を兼ね備えたIBM WebSphere Studio Application Developerを登場させた。

 Webサービスとは、インターネット上で公開されているアプリケーションを人手を介することなく、動的に結合し利用できるサービスだ。たとえばインターネット上のホテル予約システムや航空機予約システムと社内イントラネットの出張申請システムをWebサービスで連携させると、出張の行き先や日程を入力するだけで、出張に必要な予約と出張申請の両方を自分のPCから同時に行うことができるようになる。つまりアプリケーションレベルでの連携が途中に人手を介することなく可能になるわけである。

 EclipseはLinux開発者にとって多くの利点がある。そのひとつは、ベンダー各社が持っているツールの長所とEclipseプラットフォームを連携させ、このプラットフォームをさらに洗練された業界標準の開発プラットフォームへと進化させることができる点である。もうひとつの利点は、Eclipse SDKだ。このEclipse SDKを用いてプラグインを開発することにより、開発者は好みの機能をワークベンチに追加していくことができる。EclipseをベースにしているWebSphere Studio Application Developerは、SOAPやWSDLなどの最新のWebサービス標準技術に対応したアプリケーション開発機能を備えている。ウィザードによる対話形式の開発が可能であり、Webサービスに関する詳細な専門知識を必要としない。単なるデータベース連携にとどまらず、EJBによるトランザクション管理にも対応した新しいWebサービスを容易に作成することができる。さらに、EJBのテスト用クライアントアプリケーションの生成、Webサービスの活用に必要なUDDIビジネスレジストリへの公開など、Webサービスに必要な開発機能をエンド・ツー・エンドで提供し、Webサービスの実現を強力に支援している。また、J2EE、XML、HTML、携帯電話やPDA用のコンテンツなど、多様なWebアプリケーション開発に対応している。



Linuxでの効果的なオファリング −
DB2 for Linux

写真2 DB2 for Linux
 IBMは、昨年発表されたIBM DB2ユニバーサル・データベース V7.2(マルチプラットフォーム)からLinux用コンポーネントを切り出したLinux専用のパッケージ製品を本年1月に発表した。

 DB2は多くの主要なOSに対応した歴史ある堅牢なDBマネージメントシステムで、各OS間で同じ機能、同じ操作性を実現したマルチプラットフォーム対応の製品である。Linuxは安定性と機能性の面で他のプラットフォームに劣らないことが確認されており、DB2の安定性とあわせることで、極めて強固なDB環境を構築できる。処理速度の面でもDB2 for Linuxは100Gバイト TPC-Hベンチマークで世界最高のパフォーマンスを打ち出している。

 今回発表された製品は、インテルベースのLinuxマシン専用の製品であり、従来の複数プラットフォーム対応の製品に対して、料金面で大変有利(初年度のライセンス料が約半額)になっている。対象製品はエンタープライズ・エディションとワークグループ・エディションの2つ。

 このようにDB2 for Linuxは、性能、安定性、価格のすべての点において高いパフォーマンスを提供している。



Linuxソリューション

 全世界で2600を超えるWebSphere、DB2、LotusやTivoliをベースにしたソリューションが準備されおり、日本でも多くのISVがLinux上でのソリューションを取り揃えている。

 今回はその中から2つをピックアップして紹介する。


ClassCat eビジネスWebアプリケーションファミリー 〜 株式会社クラスキャット

 クラスキャットでは、低コストで構築できるeビジネスソリューションを開発、主に中小企業に向けて提供している。クラスキャットが提供するeビジネスソリューションには、大きく分けるとB2B用に販売モデルと購買モデルの2製品、B2C用にオンラインショップモデルの1製品をそろえている。

図1 ClassCat eビジネスWebアプリケーションファミリー

 各モデルは、入門・試験的運用に適したIntro、小規模なECサイトに適したStandard、本格的な中〜大規模ECサイトに適したProfessionalという構成をとっており、eビジネスの実績に応じて段階的に運用形態を変えられる。

 Introでは、WebアプリケーションサーバにTomcat、データベースにPostgreSQLといったフリーソフトウェアを使用することで価格を抑え、Standard、Professionalと、より高い信頼性や拡張性を要求される製品では必要に応じてIBMのWebSphere、DB2などを用いている。OSとしてLinuxまたはWindows 2000を選択できる。

 eビジネスは、日本においてはまだスタート段階にあり、eビジネスによって何ができるのか、それによってどれほどの効果が見込めるのか、導入コストはいくらかかるのかということが具体的に把握しにくいという状況があった。

 クラスキャットでは、この点を考慮して各製品の機能と価格を明確に提示できる販売体制をとっている。クラスキャットが最初に想定したユーザーは、小規模企業(従業員50名以下)だという。製品は、小さな企業の販売効率や、購買手続きの省力化を可能にすべく開発されている。ところが、現在マーケットは、このような中小企業のユーザーにとどまらず、中堅、大手企業にまで広がっているという。また、商業高校やパソコンスクールでのeビジネス用教材としての使用例もあるという。

 これは、製品が低価格にもかかわらず、十分に信頼性と拡張性のあるシステムを構築できるからである。大企業で独自にECサイトを構築したら数億円かかるシステムを、クラスキャットの製品を使えば100万円程度で実現できるというメリットがあるのだ。

 また、システムの本格稼動は自社の独自システムにするにしても、そのシステムをどのように設計するかを、クラスキャットの製品を用いて具体的にECサイトを運営しながら模索するという試験運用システムとしての利用価値もある。

クラスキャット製品を用いた成功事例

画面1 備後ムラカミのホームページ(http://www.bingo-tatami.com/)
 畳の製造、卸、販売を手がけている株式会社備後ムラカミでは、同社の製品販売を最初楽天市場で行っていた。同社のオリジナル商品をB2Cで展開し、ネットを利用することで店舗などのコストを削減し利幅を稼げるという実感を得たものの、販売数量が十分に伸びないという問題があった。そこで、同社はeビジネスをB2B取引に展開し、すでに実績のある取引先との売買だけではなく新規取引先の募集も含めて卸事業において実現した。

 備後ムラカミでは、このB2Bシステムとして、クラスキャットの製品を用いたところ、スタート当初1カ月で新規顧客50社を獲得、営業2人分の利益を上げるに至ったという。

 従来、商品情報の確認や見積もりには、営業が電話やファックスで個別に対応しなければならなかったが、それらのサービスをECサイトに任せることで、顧客対応から開放される。空いた時間を新規顧客の獲得にまわして収益力を強化したのだ。



クラスキャットの今後の展開

 クラスキャットでは今後、SOHOや中小企業向けに低価格のECアプライアンスサーバの発売を予定している。サーバにIBMのxSeries 220を採用した製品で100万円前後で販売される。価格が安くても、その構築に時間がかかっては意味がない。あらかじめ基本ソフトとハードウェアをセットにしたECアプライアンスサーバはECサイトの迅速な構築に向いている。

 また、アプライアンスサーバに限らず、システムの見積もりだけならば、販売代理店に問い合わせれば数日で回答を得られるという。気軽に問い合わせてみるのもよいだろう。


OneMarket PowerEC 〜 株式会社ワンマーケット

 ワンマーケットではOSにLinux、データベースにIBMのDB2を用いたECソリューションを提供している。

図2 OneMarket PowerEC概念図

 製品構成は、低価格初期導入モデルのAdvantage、専有サーバを使用するPremium、Premium Deluxe、ハードウェアごとパッケージとして購入するEnterpriseの4種類がある。Enterprise版以外はASPでの提供となるため、サーバなどハードウェアのメンテナンスに煩わされたくない企業や、社内にハードウェアの専門知識を持った人がいない場合に適している。

 OneMarket PowerECは、オブジェクト指向のECソフトウェアで、基本エンジンに必要に応じてさまざまな機能を提供するオプションモジュールを追加してユーザーに適したECサイトを構築する。

 扱えるECの形態は、B2C、B2BおよびOne to Oneマーケティングなどで、OneMarket PowerECの最新バージョンでは携帯電話などのモバイルにも対応できるようになるという。

 サイトのGUIについては、すべてHTMLテンプレートの形で用意されているので、その中から必要なものを選んで使ったり、またテンプレートそのものをカスタマイズして独自の設計が施せる。オプションモジュールとHTMLテンプレートにより迅速かつ柔軟なサイト構築が可能にもかかわらず、ECサイト構築に関する専門知識を必要としないのもこの製品の特徴である。

 eビジネスを展開するうえで欠かせないのは、何よりシステムの安定性である。OneMarket PowerECは、基幹部分のマーチャントエンジンは、バグなどの問題でもない限り変更しない。新機能はすべてオプションモジュールとして追加するため、マーチャントエンジンは実績を積むほどに安定化する。つまりASPなどでの使用実績がそのままOneMarket PowerECという製品の信頼性に寄与するのだ。

 また、オープンソースのLinuxを使用しているため、OneMarket PowerECになんらかの不具合が見つかった場合に、OSのソースにまで遡って原因を追求できることもこの製品の強みだ。柔軟なカスタマイズが可能で、なおかつ堅牢性を維持できるシステムである。

セキュリティ対策

 eビジネスを展開するうえで問題となり、また多くの人々が気にしつつもなかなかはっきりとわからないのがセキュリティの問題である。ワンマーケットもその点の問題は十分に配慮しておりいくつかの対策を施している。インターネット通信におけるサイト攻撃やウィルスなどの一般的な問題はどのASPやISPも似た対策を施していると思われるので、主にOneMarket PowerECという製品特有のセキュリティ対策についてみることにしよう。

 まずOneMarketは、データをDB2に格納することでIBMの提供するDB2のセキュリティ機能によってデータを保護している。たとえば、データベースの操作は直接DB2とデータベースマネージャを経由して行い、通信にはDB2の持つ暗号化機能を利用している。これによってHTTP通信に伴うリスクを避けている。

 また決済面において、支払いは済んだが品物が届かないとか、支払いの入金確認ができないなどの問題がある。これらは必ずしもOneMarket PowerEC側だけで対処できる問題ではないが、OneMarket PowerECを通して行われたあらゆる決済履歴の明細をユーザーに公開することで、ユーザー側からも常に取引の詳細を確認できる仕組みになっている。

世界はひとつのマーケット

 OneMarketというネーミングは「世界はひとつのマーケット」という考えから付けられたものだ。OneMarket PowerECを使用しているユーザーもその辺をよく理解した利用形態が見受けられる。

 ShockwaveではOneMarket PowerECを用いたダウンロード販売やRPGの課金システムを作っている。

 家具店などがオンラインショップを開くことで店舗スペースを増やすことなく販路を広げる手段として利用している。

 また、OneMarket PowerECを用いてWebサーバ上に販売拠点となる各国の言語で書かれたショッピングサイトを展開して、世界各国からの注文を一手に受け、商品は最寄の倉庫から発送するというビジネスを展開している例もある。OneMarket PowerECのマーチャントサーバは多言語、外国通貨決済にも対応しているのだ。

 このようなサイト運営は今後のeビジネスにとって示唆的であると思われる。たとえば、店舗はWeb上に持ち、在庫は倉庫費用の安い海外に置いて、そこからFedExなどのデリバリーサービスを使えば、日本のような高い物流コストや店舗費用を圧縮できる可能性があるからである。OneMarket PowerECとは、つまるところ調達、在庫、販売管理最適化のための選択肢を地域レベルから一挙に世界レベルに広げられる道具なのである。

 

■eビジネスの今後

 今回の取材で、異口同音にeビジネスの発展にはまずeビジネスへの信頼が成立しなければならない、という言葉を聞いた。紹介したECシステム関連製品は、いずれもこの課題をクリアすべく開発されている。そして、その信頼性、堅牢性、低コストを実現するためにLinuxが採用され、またLinuxを積極的にサポートしているIBMのミドルウェア製品群が利用されている。

 事例紹介でも触れたように、eビジネスへの参加は、すべてを新規に行うよりも、すでにあるビジネス、特に部内での調達システムや、卸しなどの大量売買などからの参入が有効ではないだろうか。これらは、顧客側の抱える不安定要因(リピート率や流行の変化など)が少なく、対投資効果を比較的確実に予測できるからである。

 まったく新しいビジネスを新しい技術を用いて展開するというのは、いってみれば二重にリスクを背負うということである。まずは、従来のビジネスに新しい技術を適用して、その中から新たなビジネスの可能性が開けてくるのではないだろうか。

 IBMとそのパートナー企業は、Linuxを介して、新ビジネスのためのさまざまな製品を価格、性能面において広範にカバーし、提供している。まずは、お持ちのビジネスプランを気軽に相談することから始めてみてはいかがだろうか。今回紹介したソリューションと関連企業の情報は、こちらのサイトからアクセスできる。




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